Sunday, June 22, 2008

映画「サルサとチャンプルー」

ちょっと前の話になりますが。ドキュメンタリー映画を見てきました。

楽しく美味しそうな名前でしたが、この映画はキューバに移民した日本人を追ったドキュメンタリー。描かれている日本人の方々の人生は恐らく、「楽しい」とは程遠いものだったろうと想像しました。

この映画では特に沖縄から移った日系キューバ人の家族を中心にストーリーが展開されているため、2つの土地を表現するためにこのタイトルが付けられました。実際サルサはアフリカの文化を受継いだラテン音楽ですし、チャンプルーは「混ぜる」という意味。映画の中に登場するキューバ移民の方達が日本人というアイデンティティをいったん忘れて、土地の文化に溶け込んで行った、溶け込むしかなったのだろうその人生をズバリ表現するタイトルとなっていました。

映画の後で波多野監督のトークショーがあったのですが、話を聞いて初めて「キューバ移民」と呼ばれる人たちの存在が移民を研究する中でも非常に貴重な存在だと知りました。例えば今年”交流100周年”と各地で関連イベントが催されているブラジル移民という方々がいますが、日本から海外へ移った移民の中でその人口が最も多い事でも知られています。彼らと比べて、キューバに渡った日本人は最初は別の土地を目指したが、そこでは生活ができず”流れ流れて”キューバに辿り着いた人の方が多いとか。そのため、現代になり研究をしようとしても、日本を出国する際の資料がきちんと残っておらずその後の行方を辿るのが困難で「忘れられた移民」とも呼ばれているそうです。

第二次世界大戦直前に故郷に錦を飾るつもりで海を渡り、その後、二度と本国に戻れなくなるなんて恐らく想像しなかったでしょう。映画の撮影中、キューバ移民1世のお1人は95歳。苦労ばかりだっただろうその人生を振り返った言葉が刺さりました。

「いやぁー、楽しい暮らしでした」

トークショーでは波多野監督が「それが生きるという事」とコメントされました。しかし、そんな人間って強くなれるの?というのが正直な感想でして。この映画に紹介された人たちよりも随分恵まれた海外暮らしを送ったはずですが、そんな自分でも海外に根付く難しさは感じました。大リーグの通信員として報道ビザを頂くまでの間は、ビザ確保に苦労したこともありましたし。程度は随分違いますが、日本で待つ家族の映像が自分自身の家族とも重なったりしましたし。そんな自分が将来こんな風に昨年までの米国暮らしを振り返る事ができるのかなーなどと考えさせられたりもして。

海を渡る難しさを改めて考えさせられた映画でした。

渋谷での公開は終了ですが、各地で上映されるとのこと。興味のある方は楽しく美味しそうな名前の映画をチェックされてみては。

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